健康コラム

京都大学 人間・環境学研究科教授 津田謹輔による連載

メタボリックシンドロームが気になる方に
“メタボ予防・治療のための生活の知恵”

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第3回 メタボとその意味 3

なぜ食べるのか。いつ、どこで、何を食べるのか。

メタボリックシンドロームが、日本人の三大死因である脳卒中や心筋梗塞につながる病態であることを説明してきました。メタボリックシンドロームの対策として、厚生労働省は、「1に運動、2に食事、しっかり禁煙、最後にクスリ」という標語を作成しました。ここでは、食事の問題から始めます。なぜ食べるのか。いつ、どこで何を食べるのか。こういった観点で考えてみましょう。

なぜ食べるのか?


 食事に期待するものは、個人個人で違うでしょう。また時代とともに変化している点もあるでしょう。生きるために手に入るものなら何でも食べないといけなかった栄養不足の時代を経て、現代では豊富な食べ物から自分で選択して食べる時代になっています。食物には、3つの機能があります。まず食物はエネルギーや炭水化物・脂肪・蛋白質といった三大栄養素、そしてビタミン・ミネラルなどの微量栄養素を含んでいます。これが一次機能です。つぎに食物は二次機能といわれるうまみやおいしさなどの味覚や風味をもっています。さらに食物には生体調節機能をもつ様々な成分を含んでおり三次機能といわれます。最近三次機能の研究がすすんでいるのですが、時に食品の三次機能に過度の期待をもつ人をみかけます。またそのようにあおる広告が後を絶ちません。やはり食物に期待するのは、一次機能、二次機能、三次機能の順番でよいのではないでしょうか。食物や栄養について正しい知識をもつことが大変重要であることをまずお伝えしたいのです。

何を食べるのか?

 動物は、ものを口にするとき食べても大丈夫かどうかを、まずは嗅覚で、そして味覚で、懸命に見定めます。甘みは体に必要な糖分を含む物、うまみはアミノ酸や核酸を含む物、おいしさは脂肪を含む物。これらの味覚は基本的に食べても大丈夫だと判断します。酸っぱい物、苦い物は腐っていたり有害な物があるので要注意です。ところが大脳の発達したヒトは、酸っぱさや苦みも楽しめるよう工夫してきました。そして、徐々にヒトは自分の味覚から情報に頼って食べるようになってきました。もう1度食物と向き合い、自分の味覚をみがいてみましょう。

どのように食べるのか?

 「食」という字を分解すると、「人」を「良」くするとなりますが、漢和辞典をひもとくと「食」は、図1のように「食物をかむ」ことと「食器に食物をもる」ことを意味する象形文字なのです。食べる基本は噛む事だったのです。昔とくらべると現代人は噛まなくなったといわれます。軟らかい食べ物が好まれ、繊維の多い野菜の摂取量も減っているのも一因です。噛む事により、食後の血糖上昇が緩やかになり、脂肪合成のホルモンでもあるインスリンが少なくてすみます。また良く噛むと脳の満腹中枢が刺激されます。これらは肥満防止に役立ちます。また噛む事で消化管からGLP1と呼ばれるホルモンが分泌されることが報告されました。GLP1は糖尿病治療薬にも応用されているホルモンで良く噛む事が糖尿病にも有用ということになります。さらに運転中ガムを噛むと眠気が覚めるように、噛む事で脳や自律神経が活性化されます。ゆっくり良く嚙んで食べましょう。
 嚙むと言えば歯です。動物はそれぞれの食に合った歯をもっています。肉食動物はオール犬歯、草食動物はオール切歯です。さて雑食動物であるヒトの歯は上下左右で計32本ですが、切歯2,犬歯1,臼歯5の割合です(図2)。臼歯を炭水化物用の歯、犬歯を蛋白質用の歯とすると、炭水化物は8分の5でおおよそ60%、蛋白質は13%程度となります。わが国で勧められるエネルギー比率とほぼ一致します。歯に合わせた食事を摂るようにしましょう。


図1:「食」という字を分解すると 図1:「食」という字を分解すると
図2:切歯,犬歯,臼歯の割合 図2:切歯,犬歯,臼歯の割合

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第2回 メタボとその意味 2 

 

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